アール・デコ

近代化がもたらした機能と実用の美

アールデコはアール・ヌーヴォーのあと、ヨーロッパ・アメリカを中心に1925年の「パリ万国装飾博覧会」を最盛期として流行したデザインです。

この時代はツタンカーメン王墓の発見などを背景にエジプトや日本・中国、インドやアラビアなど東洋趣味が一気に花開きました。産業革命後の余暇の発生からやがて自動車、飛行機といった移動手段の登場によってこの時代、「レジャー」という概念が一般化します。男性のみならず女性も積極的に連れだって外出するようになり、外で過ごすためのファッションの需要は爆発的に拡大しました。そのため、より活動的で安価に大量生産できるファッションが好まれ、デザインはシンプルかつ直線的になっていったのです。

◆主な展示デザイナー◆
ルイ・イカール
エルテ
ルネ・ラリック
ココ・シャネル

旧い美と新しい美の交錯

世界中から見出した美術や古代美術を大胆に換骨奪胎する一方でベークライトを始めとした新素材や新しい技術が装飾品にも応用されました。
この時代に生まれた技術のひとつに太刀魚の鱗を集めて中空ガラスにコーティングした魚鱗箔パールがあります。シャネルやミリアム・ハスケルなど多くの名だたるコスチューム・ジュエリーブランドが愛用していました。写真の作品はロスレー社のもので一粒一粒手作業による特殊な技法でコーティングされています。

未来への展望を込めたデザイン

この時代には近代(モダン)という時代と拡がりゆく世界への期待を込めたデザインが多く登場します。爛熟した世紀末のアール・ヌーヴォー様式は「退廃的」と片づけられ、進歩や未来といったポジティブな感覚がシンプルかつ抽象的に表現されています。

シンプルな装いにアクセント

当時流行していたジュエリーの形にドレスクリップと呼ばれるものがあります。大きいものはブローチのように1つで使うものもありますが、2つペアになっているものが多く、ドレスの襟元に左右対称に着けていました。
写真のネックレスはトップの部分がクリップになっているもの。当時流行したビーズ刺繍とともに襟元に魅力的なモダンラインときらめきを演出し、フラッパーと呼ばれる急進的で奔放なダンス好きの女性たちをはじめ、多くのドレス姿に輝きをそえたことでしょう。

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